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(スルー海の島々 セスナから写す 珊瑚礁の上に人が住んでいます)

 フィリピン、ミンダナオ島の港町サンボアンガから
 ボルネオ島の港町サンダカンまでをスルー海と云います。

  此の海域は海が浅く海上交易の要衝に成って居り
 古来から独自の権力と文化が支配する地域になっておりました。

 スペイン 米国 フィリピン独立のこの百年の歴史で
 スルー海域の独自性は無視され
 唯所有権の対象としてしか扱われてきませんでした。

 此れにムスリム文化を嫌うフィリピンの文化が合わさって
 今日のバシラン島 ホロ島の深刻な治安問題が生じています。

 と此処までは教科書にでも書いてあることです。

 では実際どういう処なのかスルー海域はと思い
 セブから補助燃料を積み込みセスナ172で出発しました。

 セブ→サンガサンガ(スルー最南端の空港)まで
 直行だと450NM(5時間)

 航続5.5時間のセスナ172だと片道がやっと
 帰りの航空燃料が充分確保出来ません。

 向い風が強いと海に着水になります。
 此の機は水上機では有りません。

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(サンボアンガ空港  ミンダナオ島)

 それでサンボアンガ経由で
 燃料を確保しながら行く事にしました。

 約100㎏の補助燃料と3人の乗員を載せ
 セスナ172はフラフラしながらサンボアンガ空港を離陸しました。

 重い 重い オモイゾー!。
 8時間分の燃料です。
 これが命の綱です。

 離陸して直ぐバシラン島
 空港の無線がバシランの国軍に僕達の接近を連絡しています。
 ムダンで飛ぶとゲリラだけでなくフィリピン軍からも撃たれるゾー!。

 重い機体は中々高度を上げて呉れません。
 バシランの空港を確認しょうとするのですが、無い

 ひょっとして斜面を上下に走っている
 滑り台の様な200m程の縦長の土地 あれがソウカモ
 うん在り得る!


 一同納得。コレヒドールより着陸は難しい。
 機は点々と続く南の小島に沿って南下し
 TONGQUIL島より西進しホロ島に向かいました。
            


 ホロはルバング島より大きな島です。
 しかも大きな独立的山地が4ヶ程あり、樹も多く
 食物の確保も難しく無く、守りに易い処の様に思えます。

 最高峰は2664f雨も降るでしょう。
 東西の山岳地帯の間が谷状に開けているので
 ショートカットで通過しょうとして止められました。

 『射的の的に成るよ』と!。

 ホロ空港の滑走路は一方通行、海側からのみ離着陸できます。
 山側は深い森が続き防衛不可能なのでしょう。

 僕達は島に沿ってさらに南下しタウイタウイ島に至りました。
 此処の山は丘のように低いので
 本格的なゲリラ活動は難しいでしょう。

 此の島の西端のサンガサンガの空港に着陸しました。
 大きな岩山が目印でその裾に立派な空港がありました。

 此処で持参した補助燃料を全て給油し
 有名なシタンカイに向かいます。

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(こういう海の珊瑚礁に家を建てて住んでいます)

 私たちは常識として人が住む処には、丘が在り、山が在り
 河が在り、草原が在り、道が在ると思っています。
 でも此処には何も有りません。

 干潮時に水深1m程になる大珊瑚礁が2面
 1万軒ほどの水上住宅が集っているのです。

 食事も、買い物も、排泄も、仕事も海。
 全ての家に長いアンテナと小船があります。
 発電機もあるのでしょう。貧乏な感じは有りません。

 僕達は高度を100f(30m)まで落として
 アンテナと凧(沢山揚がっている)を気にしながら
 メイン・ストリートと思える処を突き抜けました。

 子供達が珍客に満面の笑顔で手を振ります。
 僕達は翼をバンクして応えます。

 其のまま北上しサンダカンまで70NMの処で
 進路を東に取りサンボアンガまで返ってきました。

 途中、規模は小さくても同形態の集落は幾つも見ました。
 ボラカイ島に劣らない白い砂浜の美しい島を沢山見ました。

 ボラカイ1号、ボラカイ2号、と名付けました。

 観光の宝庫。しかし治安が悪すぎます。
 水上機が欲しいと本気で思いました。


         それではまた後日。


  

(海の中に住んでいます・・とても不思議な光景です。)
 


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(スルー海の風景  珊瑚礁だらけです)